今回は、過去におこなった増築工事を紹介します。

当時の建築基準法の規定において、既存建物の床面積の1/2以上を同一の建物として増築するためには、
既存建物の法的不適格部分を全て解消した上でなければおこなえませんでした。
構造上の不適格部分には、鉄筋コンクリートの配筋方法なども含まれており、
通常の改修では解消することができず、そのような増築はおこなわれていないのが実情でした。

そこで、構造上は既存不適格のまま一定期間(最大で20年間)建物を使用できる、
「全体計画認定制度」という制度を利用し、この増築を計画しました。
※この制度の適用は都内ではほとんど例が無く(都内第一号の認定は、弊社が別の案件で設計したもの)
行政と協議をおこないながら基準作りから始めました

前置きが長くなりましたが、本記事では普段見ることの出来ない工事の過程をご覧頂きたいと思います。
まずは、工事前後の写真から。

増築前1

増築前1

 

増築前2

増築前2

増築後

増築後

増築後の写真の右側が増築部分です。
工事は、既存部分と増築部分の間にあるバルコニーの撤去からおこないました。
以下がその様子です。

バルコニー切断状況1

バルコニー切断状況1

バルコニー切断状況2

バルコニー切断状況2

まず、コア抜き機で上の写真の上部にあるような孔を空けます。
切断したいバルコニーを支持してから、この孔にワイヤーソーを通し切断していきます。(写真下)
この作業を3辺おこなった後、クレーンで地上へ吊り下げていきます。
切断面は鉄筋が露出されるため、錆止めが塗布されます。

撤去したバルコニー

撤去したバルコニー

バルコニーの切断面

バルコニーの切断面

この工法の特徴は、振動が少ないことです。
本工事は、施設の運営を続けながらおこなったため、騒音・振動の抑制に細心の注意を払いました。
実際、中の職員に聞いたところほどんど振動は無かったとのことでした。

バルコニー撤去後の既存部分

バルコニー撤去後の既存部分

次に、バルコニーを撤去した外壁面に増築部分と連絡口となる開口を空けます。
以降は、通常の新築工事と同様の手順で増築部分を造っていきます。

増築・改修工事は新築工事よりも検討する事項が多く、
工事中に思わぬことが起きることもしばしばですが、その分完成した時の感慨もひとしおです。

設計も施工も終わってしまえば何事も無かったように建物は存在していきます。
私たちは、その過程の貴重な瞬間に立ち会えることを誇りに思っています。
これからも、その面白さや醍醐味を少しでもお伝えしていければと思います。